日本国内に住民登録している人全員に12桁の番号を割り振り、国が一元管理するマイナンバー制度の運用が、1月から始まりました。市区町村の窓口での社会保障や税の手続きの一部などで番号提示が求められます。
本人に番号を知らせる「通知カード」を届ける作業は完了のめどすらありません。自分の番号を知ることが制度運用の大前提なのに、それすらできない人がたくさん残されていること自体、制度の矛盾です。港区でも33000通が返送され、2月5日現在、約22000通が芝支所に留め置かれ、区民に届けられていません。
自治体の窓口では、児童手当申請や国民健康保険の加入手続きなどで、書類に個人番号の記入を求めることを始めました。しかし、それを知らずに手続きにくる人が各地で相次いでいます。周知されてない仕組みに住民は戸惑い、自治体職員は窓口での説明や対応に追われる事態です。
そもそも全住民を対象にした制度を掲げながら、いまだに全国で約300万世帯に「通知カード」が届いていないことが大問題です。 この手続きが混雑と混乱に拍車をかける恐れがあります。港区でもこの間、国のシステム不具合などもあり、個人番号カードの交付に時間がかかったり、交付できず後日送付という対応もありました。マイナンバー関連詐欺が相次いでいるのも、制度周知の不徹底さに付け込まれたものです。 役所に届け出た写真の本人確認のため画像ソフトを使い、本当に本人かどうか調べる「顔認証システム」も導入され、「人権の侵害」との懸念も出ています。個人番号カードは、いまのところ身分証明以外にほとんど使い道はありません。多くの個人情報が集積されている個人番号カードを持ち歩く方がよほど危険です。紛失・盗難にあえば、詐欺や「なりすまし」などに悪用されかねません。メリットがないばかりか、持つ方がリスクを高めるカードの普及と活用の拡大ばかりに力を入れる政府の姿勢は、個人情報をリスクにさらすものでしかありません。
48年前から個人番号を導入している韓国では、ハッキングや内部者による売買などで、個人情報の流出が後をたちません。どのような環境で育ったのか、学校で何を指導されたか、成績や病歴までわかります。番号一つで他人の人生を丸ごと垣間見ることができてしまう。自分は忘れていることでも国家は知っている、そんな恐ろしいことが起きる可能性があるのが番号制度です。
全ての事業所に働いている方の個人番号の提出を求めることも大問題です。どうやって対応するかわからないという事業者も数多くいます。セキュリティの費用もかかります。マイナンバーは、徴税強化や社会保障費抑制を狙った政府の動機から出発したもので、国民には不利益ばかりです。
矛盾と問題点が次々と浮き彫りになるなか、本格運用を加速するのでなく、マイナンバー制度は中止・凍結し、廃止への検討を行うことが必要です。国に凍結・中止を求めるべきです。 (16 1定 いのくま議員)