1. 「ブラック企業」の根絶について
若者を違法・無法な働かせ方で使い捨てる「ブラック企業」が大きな社会問題になっているなかで、厚生労働省は9月を「重点月間」として集中的に監督指導を実施するとして離職率が高い企業をはじめ、過重労働や法違反の疑いがある約4000社を対象に立ち入り調査を行っています。重大な法令違反が確認されれば送検したり、社名を公表する予定としています。しかし、長時間労働を抑制するといっても労使協定で過労死ラインぎりぎりまで長時間の残業が合法的に設定されていたり、残業代の不払いも「自主申告」などの手口で巧妙に隠されています。背景には経済界の要請を受け、政府が規制緩和により非正規雇用を拡大したため、「正社員になれる」として若者を大量に採用するブラック企業に向かわせ、低賃金・長時間労働を強いられ、体をこわして、自主退職に追い込んで使い捨てることにあります。取り組みを成功させるためには当事者からの告発が重要です。9月1日に厚労省が行ったブラック企業電話相談は1042件に上りました。相談の半数が20~30代の若者で内容は賃金不払い残業、長時間労働・過重労働、パワーハラスメントなどとなっています。
しかし、「月間」だけでなく日常的に違法行為を取り締まり根絶して行くには国の監督指導体制を強化するとともに、労働組合や商工団体、教育関係者、法律家など社会的な連帯で「ブラック企業」を包囲することが重要です。すでに全国各地の弁護士が参加する「ブラック企業被害対策弁護団」が結成され相談活動や裁判支援、根絶に向けた問題提起や実態調査に取り組むとしています。
区としても区内に住み、働く若者が被害者とならないよう積極的な取り組みを図るときです。そのため
①「サービス残業は違法です」「名ばかり店長・名ばかり管理職はいませんか」「有給休暇は取れていますか」「過大なノルマが強制されていませんか」など、ポスターや広報誌などを活用して啓発活動を行うこと
②「ブラック企業」根絶のための相談窓口を設けること
③厚労省の調査結果を公表させ、区内の法令違反企業には改善の申し入れを行うこと
④「雇用は正社員が当たり前」のルールを確立するよう国に働きかけること
答弁を求めます。
【区長答弁】
最初に、いわゆる「ブラック企業」についてのお尋ねです。
区としては、事業者等が労働基準関係法令を守り、職場における労働者の安全と健康を確保し、よりよい職場環境を築くことは重要であると考えております。
若年者向けの「就職応援セミナー」を開催し、労働法についての基礎知識の講習を行うとともに、労働に関する知識の啓発のため、ポケット労働法を配布しております。
今後も、関係機間と連携し、関係法令が遵守されるよう啓発に努めてまいります。
次に、相談窓口の設置についてのお尋ねです。
区では、長時間労働やパワーハラスメントなど労働環境に関して、窓口で相談を受けております。労働環境に関する専門的な相談については、労働基準監督署やハローワーク等の専門受付窓口を紹介しております。
労働環境に関する専門相談窓口の設置は考えておりませんが、今後とも関係機関と連携し、適切な対応を図ってまいります。
次に、調査結果の公表と違反企業への申し入れについてのお尋ねです。
国は、本年9月、労働基準監督署及びハローワーク利用者等からの苦情や通報等を端緒に、若者の離職率が極端に高い企業等について調査を行っております。
国は、法律違反の疑いがある企業等に対して重点的な監督指導を、また法律違反が認められた場合は是正指導を行うとしております。
区といたしましては、今後、国の調査について情報収集を行い、関係機関と連携し適切に対応してまいります。
次に、国に対し、企業へ正社員雇用を働きかけることについてのお尋ねです。
企業が労働基準関係法令を遵守した上で、社員を雇用する際に、いかなる雇用形態をとるかは、企業がそれぞれ判断することとなります。
したがいまして、国への働きかけは考えておりません。
2. 23区唯一の米軍基地、麻布米軍ヘリポート基地の撤去について
8月5日午後4時すぎ、沖縄本島中部の米海兵隊演習場キャンプ・ハンセン内に米軍ヘリが墜落炎上しました。墜落したのは、米軍嘉手納基地所属の救難ヘリHH60で民家からは約2㌔しか離れていません。
麻布米軍ヘリ基地には、墜落したHH60(ペイブホーク)と同系列のUH60(通称:ブラックホーク)が度々飛来しています。人ごとではありません。
8月28日午後7時頃、在韓米陸軍のヘリコプター6機が、管制官の着陸許可を受けないまま、鹿児島県徳之島空港に緊急着陸していたことが明らかになりました。6機のヘリは、麻布米軍ヘリ基地にも飛来するUH60ブラックホークでした。
横田基地から麻布ヘリ基地に向かう米軍ヘリが、杉並区の中学校に不時着した事故を思い出しました。
月々の利用状況について報告書の提出を要求すべきです。内容は、飛来日時、出発地、機種、飛来の目的、乗員の人数、到着時間、滞在時間、ホーバーリングの有無、離陸時間等々について報告を求めるべきです。
答弁を求めます。
米軍ヘリの飛来に関して、騒音の測定についてです。
長年麻布米軍ヘリポート基地撤去の運動をすすめている「麻布米軍ヘリ基地撤去実行委員会」は、7月31日に飛来する軍用ヘリの騒音測定を実施しました。この日の夕刻飛来したのが、UH60型ブラックホーク2機。離陸する際、騒音測定しているメンバーを威嚇するかのように、頭上をかすめて離陸していったそうです。その際、100デシベルを超える爆音と爆風で騒音計スタンドが倒されたほか、待機場所の机やイス、荷物や機材が吹き飛ばされるという被害を受けました。
港区は騒音測定を実施しましたが、アメリカと国の責任で、青山公園内、国立新美術館、政策研究大学院大学、やすらぎ会館、青山小学校、青南小学校等々、飛行経路に当たる施設の屋上に設置し、常時観測を行わせるべきです。当然、測定結果は、即時公開です。
答弁を求めます。
ヘリ基地の1日も早い撤去と、不法占拠している青山公園の即時撤去についてです。
今年2月6日に行った防衛省交渉に、初めて地域町会の代表者が参加しました。防衛省も住民の話に耳を傾けざるを得なかったことから、さらに多くの住民に参加していただくようにすべきです。また、防衛省だけでなく、アメリカ大使館にも申し入れを行うべきです。
それぞれ、答弁を求めます。
【区長答弁】
次に、麻布米軍ヘリポート基地の撤去についてのお尋ねです。
まず、利用状況報告書の提出要求についてです。
米軍は、赤坂プレスセンターにおける米軍機の飛行状況について一切公表しておらず、防衛省を通じての区からの問い合わせにも応じておりません。
こうした状況ではありますが、区は、区民から米軍ヘリの騒音等に関する苦情があった際には、即時に国を通じて、飛行の事実の確認と抗議を行い、区の姿勢を示してまいりました。
引き続き、粘り強く速やかな情報提供を求めてまいります。
次に、騒音の測定についてのお尋ねです。
区では、近隣住民の皆様が騒音に悩まされていることから、これまでも、基地撤去を要請するとともに、騒音の実態調査について国に要望してまいりました。
また、東京都主催の「基地対策に係る都区市町村会議」においても、国の責任において、常時、騒音測定器を設置することを国に求めるよう東京都に対して要
請しております。
今後とも、騒音調査を国の責任において実施するよう国及び東京都に働きかけてまいります。
次に、基地即時撤去のための申し入れについてのお尋ねです。
区は、これまでも、米軍ヘリポート基地の早期撤去要請につきまして、区議会の皆様と協力して取り組んでまいりました。
本年2月の防衛省への基地撤去要請行動には、近隣町会の方にもご参加いただき、基地の間近で暮らしている方々の率直なご意見を述べていただきました。
引き続き、防衛省をはじめアメリカ大使館を含む関係機関に対する基地撤去の早期実現に向けた要請を、区民に参加してもらうことも含め、区議会の皆様と相談しながら行ってまいります。
3. 被爆70周年の2015年に向け、核廃絶にむけての大規模な催しの開催について
68年前の8月6日、広島に、8月9日に長崎に原爆が投下されました。
今年4月、ジュネーブで開かれた核不拡散条約(NPT)再検討会議準備委員会で提出された核兵器の非人道性を訴える共同声明に、80カ国が賛同しました。南アフリカなどの提案国は、日本にも賛同を求めましたが、日本政府は拒否し、世界の期待を裏切りました。
8月9日、長崎市主催の平和式典が開かれました。田上富久長崎市長は、「平和宣言」で、共同声明への署名を拒否したことをあげ、「二度と、世界の誰にも被爆の経験をさせないという被爆国としての原点に反する」と強く批判しました。NPT未加盟の核兵器保有国であるインドとの原子力協定交渉の動きについても、「保有国をこれ以上増やさないためのルールを定めたNPTを形骸化することになる」と指摘。政府に対し、「被爆国の原点に返ることを求める」と2回繰り返し訴えました。それだけに、核廃絶に向けて、日本国民の果たす役割は極めて重要になっています。
8月5日に区長も加盟している平和市長会議の第8回総会が開かれました。港区からは、担当課長が出席しています。平和市長会議には、157カ国・地域の5,712都市が参加しています。核廃絶の地道な活動が世界を動かしています。
総会で採択された決議(ヒロシマアピール)は、「平和市長会議が現段階で優先するのは、核兵器禁止条約または『核兵器のない世界』に向けたその他の有効な取り組みを促進することである。」と述べ、行動計画(2013年~2017年)は、「核兵器廃絶に向けて各国政府に具体的な行動を促す市民の声をさらに大きくし、核兵器廃絶の国際世論を拡大することである。そのためには、一人でも多くの人に広島・長崎の被爆の実相を理解してもらい、核兵器廃絶を願う被爆者の切実な思いが世界中の人々と共有できるようにする」と提起しています。
被爆者の多くは高齢で、被爆の実相を多くの区民に知ってもらう機会は、ますます狭くなっていきます。
被爆70周年の2015年に核廃絶に向けての大きな催しを計画し、そこに向けて、区内の原爆被爆者団体の港友会のみなさんや、区内の平和団体等の協力を得るなどして、被爆体験者のDVDの作成、被爆体験を聞く会、被爆2世・3世の方々のお話を聞く会等々、二度とヒロシマ・ナガサキを繰り返さないという思いを、区民共通の思いにする取り組みを計画すべきです。
被爆70周年、NPT再検討会議が開催される2015年、港区平和都市宣言30周年は、その良い機会ではないでしょうか。
答弁を求めます。
【区長答弁】
次に、核廃絶の催しを被爆70周年に開催することについてのお尋ねです。
2015年、平成27年は、終戦から70年となる節目の年であり、港区にとっては、港区平和都市宣言30周年の年でもあります。
終戦から70年が経過し、戦争体験の風化を防ぎ、世代を超えて戦争の悲惨さと平和の尊さを伝えていくことは、区にとっても大きな責務と考えております。
港区平和都市宣言30周年の記念行事の中で、原爆の悲惨さや核兵器の恐ろしさを伝えてまいります。
4. 東日本大震災の支援ボランティアに参加する区民のボランティア保険料について
東日本大震災は、未曾有の大災害で、住宅は流失・破壊、生活に必要なすべてを失い、今なお不自由な仮設住宅での生活、家族がバラバラでの生活を余儀なくされています。
日本共産党は、震災直後から対策本部を立ち上げ、国民のみなさんに救援募金をお願いするとともに、全党あげて支援を行ってきました。
日本共産党港地区委員会と党区議団は、区民にボランティアを呼びかけ、いままで15回、石巻市を中心にボランティア活動を行ってきました。ボランティア活動には、ポスターやチラシを見て応募するなど、多くの党外の方をも含め126名が参加、このための救援募金456万円、お米や衣類、自転車等々多く方から支援物資も寄せられ、被災者に届けてきました。
「港区大規模災害被災地の支援等に関する条例」に基づいて、東日本大震災のボランティアで支援に行く区民の「ボランティア保険の保険料の負担」を行っています。
ボランティア参加者は、とても助かっています。
2011年度から2013年度(年度途中)の3年間で1,166名分です。多くの区民がボランティアに行っていることがわかります。
被災地では、依然として多くの支援が求められています。
多くの区民に引き続き、ボランティアに参加してもらうために、ボランティア保険の保険料負担を継続すべきです。
答弁を求めます。
【区長答弁】
次に、東日本大震災支援のボランティア保険についてのお尋ねです。
これまで区は、区民の皆さんとともに、被災地の一刻も早い復旧・復興のための支援を積極的に行ってまいりました。
区民の皆さんが、被災地でのボランティア活動を行う際に加入する、ボランティア保険については、その保険料を平成23年度から区が全額助成しております。今年度は昨日までに150名の方がこの制度を活用され、3年間で延べ1177名の区民の皆さんが被災地の支援に向かわれています。
区は、今後も多くの区民の皆さんが、被災地への自主的な支援活動に積極的に参加していただけるよう、ボランティア保険の保険料の助成を継続してまいります。
5. 「違法貸しルーム(脱法ハウス)」をなくし命と人権を守ることについて
「倉庫」や「事務所ビル」「マンション」などを仕切り、狭いスペースに人を住まわせる「違法貸しルーム(脱法ハウス)」が拡大しています。
国土交通省は6月に建築士関係団体や不動産業関係団体などに是正と情報を求める通知を出しています。区に寄せられた情報では、違反が疑われる物件は31件あり、立ち入り調査を行った26件のうち15件に問題があったと聞いています。調査継続中のためさらに増える可能性があります。建築基準法に違反する内容は、「窓の無い居室」、「面積違反」(都建築安全条例の居室の床面積は7平方メートル以上)、「間仕切り壁違反」(耐火・遮音)、「避難設備の不備」などとなっており、火災が発生すれば大災害になる危険性があるうえに、住まいの人権が守られていない実態が明らかになっています。
業界団体が独自の基準を定めるなどの動きがあるものの、国の統一基準がなかったことが広がった原因とも指摘されています。 区民の生命・財産を守り、区民の誰もが安心して暮らせる港区を創るため、社会問題化しつつある「脱法ハウス」をなくすことが急がれています。このため
区内事業者、業界などに直接情報の協力要請を行い調査すること。
法令に違反する物件については、厳しく指導するとともに改善の報告を求めること。
答弁を求めます
【区長答弁】
次に、「違法貸しルーム」についてのお尋ねです。
まず、区内事業者などの協力による調査についてです。
国は、本年の7月12日と19日にマンション管理組合、建築士関係団体、宅地建物取引業関係団体に情報提供の協力依頼を行っております。
違法貸しルームは、建築物の外観から違反状態を判別することができないため、所在や事業者を特定することは困難な状況です。
このため、区内事業者に情報提供を要請することはできませんが、引き続き、ホームページに違法貸しルームの相談窓口を設け、広く情報を収集し、対応してまいります。
最後に、違反物件への指導と改善報告を求めることについてのお尋ねです。
区は建築物への立入調査を実施した結果、問題がある建築物15件のうち、違反の確認ができた11件について、所有者や管理者に指導書を送付し、是正内容の報告を求めております。
引き続き、区は違法貸しルームについて国、東京都、消防と連携して違反是正への取り組みを進めてまいります。
6. 高校授業料「無償化」に所得制限の導入を止めることについて
高校授業料の無償化制度に来年度から所得制限を設ける法案を秋の臨時国会に提出することが自民・公明両党で合意したとの報道がされました。高校授業料の無償化は、父母や教職員らの長年の運動をうけ、2010年4月に開始され、公立高校の授業料を国が負担し、私立高校授業料も原則同額を就学支援金として負担しています。両党が合意したとする世帯収入910万円を所得制限の基準とした場合、全国的には高校生のいる世帯の22%が支援対象外になります。区内では、高校生対象年齢者が約3500人であり、所得の高い人が他地域に比べ多いことから大きな影響が予想されます。所得制限で生まれる財源は給付型奨学金や私立高校への支援金の加算にあてるとしていますが、日本の教育機関への支出総額は、GDP比3.6%でOECD加盟国中最下位です。日本政府は昨年9月に、高校・大学の段階的な無償化を定めた国際人権A規約13条の適用保留を撤回したところであり教育予算を抜本的に増やすことこそ必要です。所得制限導入は「社会全体で学びを支える」という教育無償化の理念に真っ向から逆らうものです。また同じクラスに学費が無償の子と、有償の子が生まれるというは、こどもたちを分断することになり教育政策としてはあってはならないことです。しかも、全国には5千の高校があり332万人が在籍しており、世帯所得を調べ徴収するとなれば大変な費用と手間がかかります。親が失業した場合すぐに「無償化」に切り替えられるのかなど現場の混乱は必至です。
教育の無償化に逆行し、こどもたちを分断し、教育現場に混乱をもたらす高校授業料「無償化」に所得制限を導入するのは止めるよう国に申し入れるべきです。答弁願います。
【教育長答弁】
高校授業料「無償化」に所得制限の導入を止めるよう国に求めることについてのお尋ねです。
文部科学省は、低所得者世帯への支援の充実、給付型奨学金制度の創設、公私立間格差の是正などを実施するため、高校授業料無償化の見直しを可能な限り早期に実現することは重要であるものの、今後地方公共団体との調整を要するものとしております。
したがいまして、引き続き国の動向を注視してまいります。